Gifu Women’s University
岐阜女子大学南アジア研究センター
Center for South Asian Studies, Gifu Women’s University

CSAS Picks:南アジア注目情報

岐阜女子大学南アジア研究センター(CSAS)のセンター員が、南アジアに関する報道、論文、公開資料、書籍、イベントなどの中から、特に注目すべきものを選び、簡潔な紹介とコメントを添えて紹介するコーナーです。

Issue
第6号(2026/10/26)
【CSAS Picks:南アジア注目情報-12】

福永正明(特別客員教授)

モルディブ大統領、パキスタン訪問でSAARC再生に向けた積極的役割を表明 — Maldives ready to revive SAARC: President
種別: メディア記事
出典: The Edition(モルディブ)
日付: 2026年10月21日
URL: https://edition.mv/news/55114
概要:

モルディブのムイズ大統領は、2026年10月のパキスタン訪問中、南アジア地域協力連合(SAARC)の再生に向けて積極的な役割を果たす意向を表明した。

SAARCは2014年の第18回首脳会議を最後に、首脳会議が開かれていない。2016年に予定された第19回首脳会議も、インドとパキスタンの対立を背景に中止された。

ムイズ大統領は、加盟国間の信頼回復と対話を促進し、SAARC首脳会議の早期開催を目指す方針を示した。大統領は同年7月の独立記念日演説でも、SAARC再生に向けてモルディブが仲介役を担う用意があると述べていた。

コメント:

インド洋の海洋国家モルディブが、南アジア地域協力の再生に向けて努力を続けていることは評価される。 この地域は、地理的にも人口的にも他を圧倒するインドと周辺諸国との間にさまざまな課題を抱え、特にインドとパキスタンとの対立関係により、大きく影響されてきた。

地域協力は南アジア地域の経済発展と政治・安全保障の安定のためには不可欠であり、重要である。 小国モルディブが積極的にこのような問題に取り組むことは、真の外交とは何か、そして国益を追求するとはどういうことかについても問いかけることとなろう。

【CSAS Picks:南アジア注目情報-13】

ティンウィン(TinWin)(特別研究員・Visiting Researcher)

日本のミャンマー外交:南アジアにとつてなぜ重要なのか
記事名: Japan’s “Silent Diplomacy” in Myanmar: A Partner for ASEAN’s Peace Process?
種別: 研究解説
出典: FULCRUM, ISEAS–Yusof Ishak Institute
著者: Hirokazu Omatsu and Kyi Sin
日付: 2026年10月14日
URL: https://fulcrum.sg/article/commentaries/japans-silent-diplomacy-in-myanmar-a-partner-for-aseans-peace-process/
概要:

本稿は、日本による和平仲介の取り組みの拡大と、それがミャンマー紛争に対処するASEANの努力に果たしうる役割を検討している。著者らは、2020年と2022年に笹川陽平氏がミャンマー軍とアラカン軍との非公式な停戦を仲介したことを含め、日本の長年にわたる外交的関与に注目する。

これらの停戦は最終的に崩壊したものの、日本の外交経験、地域における関係、比較的控えめな働きかけは、日本をASEANにとつて有用な協力相手にしうる。著者らは、和平プロセスの主導権をASEANに委ねながら、日本が仲介に関する専門知識や資源を提供できると指摘している。

コメント:

本稿は主として日本とASEANを検討しているが、その含意は南アジアにも直接及ぶ。バングラデシュにとつて、ミャンマーのラカイン州の動向は、未解決のロヒンギャ難民危機と密接に結びついている。したがつて、外交的な取り組みは、武装集団間の合意だけに焦点を当てるのではなく、ロヒンギャの人びとの保護、権利、実質的な参加を考慮しなければならない。

インドにとつて、ミャンマーの安定は、国境の安全保障、北東部の連結性、カラダン輸送回廊などの戦略的なインフラ計画に関わる。

ロイターが10月21日に報じた、笹川氏とミャンマーの軍を後ろ盾とするミン・アウン・フライン大統領との10月20日の会談を受け、本稿の時宜性は一層高まつている。

この関与の再開は重要な問いを提起する。外交的仲介は持続可能な政治的解決に貢献できるのか。それとも、根底にある政治的対立を未解決のまま残し、一時的な停戦を生むだけなのか。

したがつて、日本が果たしうる役割は、外交的な接触経路や合意を促進する能力だけでなく、その努力が民間人の保護を改善し、包摂的な政治対話を促し、持続可能な平和の展望を前進させるかどうかによつて評価されるべきである。

南アジア、とりわけバングラデシュとインドにとつて、その結果は人道、安全保障、地域の連結性に直接的な影響を及ぼす。

注記:原文は英語、センターにて和訳。

署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、岐阜女子大学南アジア研究センターとしての見解を示すものではありません。

岐阜女子大学南アジア研究センター(CSAS)

Issue
第5号(2026/10/10)
【CSAS Picks:南アジア注目情報-9】

矢野義昭(特別客員教授)

Breaking-Pepe Mecca Pact Signed
種別: 画像(SNSコメント)
出典: Breaking-Pepe Mecca Pact Signed
媒体名・発行機関: SNS Channel, @Transition_Protocol
日付: 2026年8月8日
概要: パキスタンはサウジ、トルコと共同防衛協定を締結したが、共通の敵も細部内容も不明。同時にパキスタンは、米、中、イランと良好な関係を維持し、イランとサウジの和平仲介に動くなど地域での仲介国としての立場を固めている。
コメント: 中国はパキスタン、イランとの関係を強化し、インドを中東から排除しようとしているのではないか。
【CSAS Picks:南アジア注目情報-10】

日下部尚德(特別客員教授)

経済成長の陰で再び拡大する貧困――バングラデシュで800万人が貧困層に
記事名: 8 million people slipped into poverty in 4 years
種別: 新聞記事
出典: Prothom Alo(バングラデシュ)
日付: 2026年10月8日
URL: https://en.prothomalo.com/business/local/qvnxuyzl7k
概要: 世界銀行が公表した最新のバングラデシュ経済報告書によると、2022年以降の4年間で約800万人が新たに貧困層に加わり、貧困率は18.7%から22.5%に上昇したと推計される。背景には物価高騰による実質所得の低下や雇用創出の停滞があり、さらに約6,200万人が貧困線のすぐ上で生活し、経済的ショツクによつて貧困に陥るリスクを抱えている。
コメント: バングラデシュは長年、経済成長と貧困削減の成功例として語られてきた。しかし、約6,200万人が貧困線のすぐ上で暮らしているという事実は、統計上の貧困脱却が、必ずしも安定した生活基盤の獲得を意味しないことを示している。物価高や災害はこうした脆弱性を顕在化させる契機であり、その背景には不安定な雇用や所得格差、十分に機能していない社会保障などの構造的問題がある。2024年の学生運動で表面化した若者たちの将来への不安とも重ねて考えれば、問われているのは単なる経済成長の回復ではない。成長の恩恵が誰に届き、危機に際して誰が取り残されるのかという、開発のあり方そのものを問い直す必要がある。
【CSAS Picks:南アジア注目情報-11】

笠井亮平(特別客員准教授)

Concerns grow over increased global ties with Taliban in Afghanistan
種別: 記事
出典: The Guardian
日付: 2026年8月15日
URL: https://www.theguardian.com/world/2026/aug/15/concern-grow-global-ties-taliban-afghanistan-human-rights
概要: アフガニスタンでは、ターリバーンによる政権再奪取から2026年8月で丸5年となつた。2025年にロシアがターリバーンを政権承認したほか中国やインド等も関係拡大を図つており、最近ではEUも接触するなど、ターリバーンの外交空間は拡大している。一方で国内の人権状況は依然として厳しい状況にあり、2026年3月に国連は「人権の墓場」と呼んでいる。人権団体からは、各国の関与増大によつて人権問題の重要性が低下するのではないかとの懸念が表明されている。
コメント: ターリバーン政権が今後も続く可能性が高いという現実を前に、一部の国がアフガニスタンとの外交的関与を強めている現状がまとめられている。ただし、女性の教育や権利をめぐり変化の兆しがない中で、米欧日の対応は慎重にならざるを得ない。なお、本記事では触れられていないが、かつてターリバーンと良好な関係にあつたパキスタンが現在はアフガニスタンと武力衝突を続けていることも重要な展開である。
Issue
第4号(2026/09/13)
【CSAS Picks:南アジア注目情報−7】

ティンウィン(特別研究員)

Bangladesh urges Japanese envoy on Myanmar to facilitate safe Rohingya repatriation
笹川氏の仲介とバングラデシュのロヒンギャ外交:新たな展開か?
種別:メディア記事
出典:Democratic Voice of Burma ― UNB report
日付:2026年9月9日
URL:https://english.dvb.no/bangladesh-urges-japanese-envoy-on-myanmar-to-facilitate-safe-rohingya-repatriation/
概要:バングラデシュ首相は、日本政府特別代表の笹川陽平氏に対し、安全で自発的、かつ尊厳ある形でのロヒンギャ難民の帰還実現に向けた協力を要請した。笹川氏は、ラカイン州における治安の不安定さや情勢の複雑さから、帰還の進展には時間を要し、困難が伴うとの見解を示した。
コメント:笹川氏がこれまで築いてきた仲介ネットワークは、南アジア研究にとって時宜を得た問いを投げかける。日本の関与は、バングラデシュの帰還外交と、アラカン(ラカイン州)における統治主体の変化とを結びつける役割を果たしうるのか。今回の対話再開の意義は、民間人保護の改善や、ロヒンギャ自身の実質的な参加を含む自発的帰還の条件整備という観点から評価されるべきである。
注記:原文は英語、センターにて和訳
【CSAS Picks:南アジア注目情報−8】

福永正明(特別客員教授)

The kids are showing India a new kind of politics(子供たちはインドに新しい形の政治を見せている)
種別:Article
出典:Frontline(The Hindu Group)
日付:2026年8月21日
URL:https://frontline.thehindu.com/politics/gen-alpha-school-protests-indian-education-crisis/article71372746.ece
概要:インド各地で、小中学生を中心とするアルファ世代が、公立学校の教員不足や、トイレ不備、飲料水・電気・扇風機、教室などの設備について、基本的な教育環境の改善を求めて抗議をはじめている。アルファ世代とは、一般に2010年代以降に生まれた、Z世代に続く世代を指す。
現在、その年長層が10代半ばに達し、学校生活の当事者として声を上げる。この背景には、デリーでZ世代の若者を中心に展開されたCJP(Cockroach Janta Party、ゴキブリ人民党)を主体とする抗議運動がある。デリー中心部で抗議行動を続けた若者たちは、試験不正を批判して中央政府教育相の辞任を要求、警察による強制排除を受けながら抗議を続行、7月25日に教育相が辞任を実現させた。
著者のアナンド・テルタムブデは、この経験が「政府に要求すれば変えることができる」という意識を若者の間に生み、それがさらに年少のアルファ世代にも広がったとみる。インド独立記念日の8月15日、CJPが公立学校の設備環境問題を調査する「School Thik Karo(学校を直せ)」運動を開始した。各地の小中学生による抗議は、組織的に指揮したのではなく、子どもたち自身が、それぞれの学校が抱える具体的な問題を訴え要求をだしている。
テルタムブデは、こうした動きを、教育という身近な問題から始まる新たな政治の可能性として捉える。
コメント:記事では、宗教や社会成層、ナショナリズムなど、インドの人びとを分断してきた社会課題とは異なり、公教育という誰にも身近な問題が、人びとを結び付ける可能性を指摘する。農村地域や辺境地域でも子どもの学校に教員が必要であり、暑い教室には動く扇風機が必要だとの要求は共有できる。具体的な問題への不満が、社会内部の対立ではなく、行政サービスを提供する国家そのものに向かう点を重視する。
さらに、抗議の主体が小中学校の児童・生徒ということである。政府を批判する運動に対して使われてきた「反国家的」「都市ナクサライト」などのレッテル貼りと排除は、教員やトイレを求める10歳代の子どもに適用することは出来ない。もし制服姿の小学生に警察が強制力を使えば、政府への批判は確実だろう。
Z世代が政府に対する恐怖を打ち破り、それに続くアルファ世代が日常生活に直結する要求を掲げはじめた。ここにテルタムブデは、インド政治の新しい動きの可能性を見いだしている。
この記事は、経済成長や大国化が強調される現在のインドを、異なる側面から理解するためにも重要である。公立学校では、教員、教室、トイレ、飲料水など基礎的な教育環境さえ十分に整わない地域が多くあり、その問題を当事者である子どもたち自身が訴えはじめている。インドの現在を理解するには、経済成長や国際的な存在感だけでなく、こうした公共サービスの実態と、それに対して声を上げ始めた若い世代の動きにも注目するべきことを示している。
Issue
第3号(2026/08/3)
【CSAS Picks:南アジア注目情報−5】

倉沢宰(特別客員教授)

Govt primary schools: Students stumble on conjunct letters, weak in maths and English
種別:メディア記事
出典:Prothom Alo(バングラデシュ)
日付:2026年7月18日
URL:https://en.prothomalo.com/bangladesh/pxcn6mbfdl
概要:初等・大衆教育省傘下の義務初等教育実施・モニタリング・ユニットが、首都のダッカおよび周辺地域の約2,100校を対象に最近実地した調査によると、公立小学校では多くの児童が、ベンガル語の基本文字を正しく発音できず、特に複合文字(合字)の読み方につまずいていることが明らかになった。
さらに、この調査では、多くの児童が算数の能力も不足しており、英語の習熟度も同様に低いことが判明した。
報告書では、男子児童が女子児童に比べて遅れをとっており、出席率も低いことが指摘されている。
コメント:本調査は現場の現状を具体的に把握するために実施されたものである。公立小学校における教育の質については以前から懸念が続いていた。
深刻な教員不足に加え、資格のある教師も不足している。現場の声によると、約1から2割の児童は学業に著しく遅れをとっている。
この深刻な状況は、他にも様々な社会経済的要因、地域的な格差、経済的な困窮と不登校の問題などの影響も受けている。
初等教育の段階で読み・書き・計算の能力が不十分なままだと、その悪影響が上級学年になるにつれてさらに顕著になると考えられる。世界銀行が指摘する「学習の貧困」を解消するためにはどのような政策が進められるか、バングラデシュの今後の発展を注視していく必要がある。
【CSAS Picks:南アジア注目情報−6】

バタライ・ビノド(特別研究員)

Inside the strange, disciplined, unreachable world of Nepal’s Prime Minister
種別:メディア記事
出典:The Kathmandu Post(ネパール)
日付:2026年7月3日
URL:https://kathmandupost.com/national/2026/07/03/inside-the-strange-disciplined-unreachable-world-of-nepal-s-prime-minister
概要:本記事は、就任間もないネパールのバレン・シャハ首相の独特な指導スタイルを検証している。SNSへの依存、迅速な意思決定、少数の側近への偏重、そして議会や外交団との関わりの乏しさが指摘されている。支持者はその効率性と近代的な手法を評価する一方、批判者は透明性、説明責任、民主的制度への姿勢に懸念を示している。
コメント:ネパールのバレン・シャハ首相は、デジタルかつ個人のカリスマ性に依拠した新たな指導者像を体現している。その革新的な手法は世論の大きな支持を得ている一方、長期的な民主主義の安定には、制度的透明性、議会との関わり、行政の説明責任の強化が不可欠である。同政権は、現代ネパールにおける政治指導のあり方の変化を考察するうえで、示唆に富む事例といえる。
Issue
第2号(2026/07/13)
【CSAS Picks:南アジア注目情報−3】

村山真弓(特別客員教授)

Has the Demography of the Border Districts in Eastern India Changed?
種別:メディア記事
出典:The India Forum
日付:2026年6月26日
URL:https://www.theindiaforum.in/politics/has-demography-border-districts-eastern-india-changed
概要:バングラデシュからのイスラーム教徒不法移民の流入により、国境周辺地域の宗教人口構成が大幅に変わったという政治的レトリックに関して、2001年、2011年の人口センサス、2021年センサスの代替として2019-21年全国家族保健調査(NFHS)のデータを用いて、西ベンガル州並びにアッサム州について、その仮説を検証しようと試みたもの。結論としては、2001年から2011年、2011年から2019年の期間において、国境隣接県・地域のムスリム人口が突出して増加したという傾向は見出されなかった。
コメント:世界のあらゆる場所で越境移民は問題化されつつあるが、インドに関して言えば、バングラデシュと国境を接する東部並びに北東部の国境に関して問題がフォーカスされている。英領時代の国境形成と軌を一にして違法化されてきた越境移民の問題は、現在もなお、インド・バングラデシュ間の最大の懸案事項となっている。
2025年8月15日、モディ首相が発表した人口変動に関するハイレベル委員会が、2026年5月26日、正式に発足した。委員会は不法移民の流入等自然増以外の理由による人口変動を全インドで包括的に検証し、期限を定めた解決策を、1年ないしは1年半以内に提出することが期待されている。本記事は、同委員会設置に至った政治的レトリックが、それを裏付けるエビデンスがないまま声高に語られてきたことを、驚くべきことと述べている。
人口構成の変化には、人口移動(流入ならびに流出)以外にも出生率、死亡率等様々な要因が関わっている。委員会がいかなる方法論を用いて調査を行い結論を導き出すのか、その過程で新たな問題を惹起することにならないのか、注視していく必要がある。
【CSAS Picks:南アジア注目情報−4】

福永正明(特別客員教授)

Marathwada reports 465 farmer suicides in first half of 2026
種別:メディア記事
出典:The Economic Times(PTI)
日付:2026年7月8日
URL:https://economictimes.indiatimes.com/news/india/marathwada-reports-465-farmer-suicides-in-first-half-of-2026/articleshow/132263311.cms
概要:インド・マハーラーシュトラ州マラートワーダ地域で、2026年1~6月の半年間に465人の農民が自殺したことが、同州地域行政の報告で明らかとなった。
最も多かったのはチャトラパティ・サンバジナガル県の109件で、8県全体では215件が政府補償の対象と認定され、222件は審査中となっている。
前年2025年には同地域で1,131件の農民自殺が記録されており、農業危機が依然として深刻であることを示している。
コメント:農民自殺は1990年代以降、インド農業が抱える構造的問題を象徴する課題として、国内外で繰り返し議論されてきた。
名目GDPが世界第5位となる経済成長を遂げる一方、人口の約6割が暮らす農村部では依然として深刻な経済的・社会的脆弱性が残されていることを示す象徴的な問題でもある。
特にマハーラーシュトラ州のマラートワーダ地域やヴィダルバ地域は、農民自殺が最も多い地域として知られる。
その背景には、半乾燥地帯でモンスーンに大きく依存する自然条件に加え、綿花や大豆などの商品作物への依存、肥料や農薬などの農業投入資材、債務負担、市場価格の変動、気候変動による干ばつや異常気象、さらに十分とはいえない政策支援など、複数の要因が重なった構造的問題が存在する。
本記事は、こうした状況が現在もなお改善していないことを示しており、インド経済の成長だけでは捉えられない農村社会の現実を理解するうえで重要な事例である。
同時に、農業政策、地域格差、気候変動、社会保障を総合的に考える必要性を改めて示している。
Issue
第1号(2026/06/03)
【CSAS Picks:南アジア注目情報】1

広瀬公巳(特別客員教授)

「ビジャイTN州首相が就任、産業政策は引き続き要注視」
種別:機関発信記事
出典:JETRO
日付:2026年5月14日
URL:https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/05/2f4d2d9a35407d07.html
概要:インド南部タミル・ナドゥ(TN)州議会選挙の結果を受け、州最大政党となった新党タミラガ・ベットリ・カザガム(TVK)の党首で人気映画俳優のジョセフ・C・ビジャイ氏が、州首相に就任した。
コメント:ファンクラブを政治組織化する手法は、ドラヴィダ政治運動の伝統とは少し次元が異なる。有名俳優が選挙に出るのではなく、社会正義を実行する人物に「推し」が集まる。
【CSAS Picks:南アジア注目情報】2

三輪博樹(特別客員教授)

PM Modi urges citizens to cut fuel use, avoid foreign travel
種別:メディア記事
出典:The Hindu
日付:2026年5月11日
URL:https://www.thehindu.com/news/national/article70963121.ece
概要:インドのナレンドラ・モディ首相は、5月10日の集会での演説で、不確実な世界経済、サプライチェーンの混乱、インフレ圧力に耐えるために、総力を挙げて取り組むべきだと呼びかけた。同首相は人々に対して、不必要な金の購入や海外旅行を自粛して外貨の流出を防ぐこと、公共交通機関の利用や在宅勤務を促進することなども要請した。
コメント:中東情勢の悪化はインド経済にも悪影響を及ぼしており、国内では燃料価格の高騰が大きな問題となっている。モディ首相の発言は、こうした状況への対応として国民の協力を呼びかけたものであるが、燃料価格は人々にとって身近で重大な問題であるため、政府が今後の対応を誤れば、政権支持の低下につながる可能性もある。
【CSAS Picks:南アジア注目情報】3

TinWin(特別研究員)

Myanmar’s junta chief turned president heads to India, with an eye on China
ミャンマーの軍政トップから大統領となったミン・アウン・フライン氏、インドへ――中国を視野に
種別:メディア記事
出典:Reuters
日付:2026年5月30日
URL:https://www.reuters.com/world/china/myanmars-junta-chief-turned-president-heads-india-with-an-eye-china-2026-05-30/
概要:ミャンマーのミン・アウン・フライン大統領は、2026年4月の大統領就任後初となる外国訪問として、インドへの5日間の公式訪問を開始した。訪問中には、ナレンドラ・モディ首相との会談が予定されており、二国間協力、国境安全保障、連結性、貿易、経済関係などについて協議するとみられている。本記事ではまた、ミャンマーにおける中国の影響力を抑えることや、同国のレアアース資源へのアクセスを探ることに対するインドの関心も指摘している。
コメント:今回の訪問は、ミャンマーをめぐる地域外交がますます複雑化していることを示している。ミャンマーに関する議論は、多くの場合、民主主義や人権という観点から語られ、それらが重要な論点であることに変わりはない。その一方で、インドのような近隣国は、国境の安定、経済的連結性、中国との競争、重要資源へのアクセスといった実務的課題にも対応しなければならない。したがって今回の訪問は、政治的に議論のある政府と向き合う際に、国家はいかに規範的価値と地政学的現実とのバランスを取るべきかという、南アジア研究にとってより広い問いを浮かび上がらせている。この緊張関係を理解することは、インドのミャンマー政策だけでなく、南アジアと東南アジアにまたがるより広い地域動態を読み解くうえでも不可欠である。
注記:原文は英語、センターにて和訳

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