Gifu Women’s University
岐阜女子大学南アジア研究センター
Center for South Asian Studies, Gifu Women’s University

CSAS Picks:南アジア注目情報

岐阜女子大学南アジア研究センター(CSAS)のセンター員が、南アジアに関する報道、論文、公開資料、書籍、イベントなどの中から、特に注目すべきものを選び、簡潔な紹介とコメントを添えて紹介するコーナーです。

Issue
第2号(2026/07/13)
【CSAS Picks:南アジア注目情報−3】

村山真弓(特別客員教授)

Has the Demography of the Border Districts in Eastern India Changed?
種別:メディア記事
出典:The India Forum
日付:2026年6月26日
URL:https://www.theindiaforum.in/politics/has-demography-border-districts-eastern-india-changed
概要:バングラデシュからのイスラーム教徒不法移民の流入により、国境周辺地域の宗教人口構成が大幅に変わったという政治的レトリックに関して、2001年、2011年の人口センサス、2021年センサスの代替として2019-21年全国家族保健調査(NFHS)のデータを用いて、西ベンガル州並びにアッサム州について、その仮説を検証しようと試みたもの。結論としては、2001年から2011年、2011年から2019年の期間において、国境隣接県・地域のムスリム人口が突出して増加したという傾向は見出されなかった。
コメント:世界のあらゆる場所で越境移民は問題化されつつあるが、インドに関して言えば、バングラデシュと国境を接する東部並びに北東部の国境に関して問題がフォーカスされている。英領時代の国境形成と軌を一にして違法化されてきた越境移民の問題は、現在もなお、インド・バングラデシュ間の最大の懸案事項となっている。
2025年8月15日、モディ首相が発表した人口変動に関するハイレベル委員会が、2026年5月26日、正式に発足した。委員会は不法移民の流入等自然増以外の理由による人口変動を全インドで包括的に検証し、期限を定めた解決策を、1年ないしは1年半以内に提出することが期待されている。本記事は、同委員会設置に至った政治的レトリックが、それを裏付けるエビデンスがないまま声高に語られてきたことを、驚くべきことと述べている。
人口構成の変化には、人口移動(流入ならびに流出)以外にも出生率、死亡率等様々な要因が関わっている。委員会がいかなる方法論を用いて調査を行い結論を導き出すのか、その過程で新たな問題を惹起することにならないのか、注視していく必要がある。
【CSAS Picks:南アジア注目情報−4】

福永正明(特別客員教授)

Marathwada reports 465 farmer suicides in first half of 2026
種別:メディア記事
出典:The Economic Times(PTI)
日付:2026年7月8日
URL:https://economictimes.indiatimes.com/news/india/marathwada-reports-465-farmer-suicides-in-first-half-of-2026/articleshow/132263311.cms
概要:インド・マハーラーシュトラ州マラートワーダ地域で、2026年1~6月の半年間に465人の農民が自殺したことが、同州地域行政の報告で明らかとなった。
最も多かったのはチャトラパティ・サンバジナガル県の109件で、8県全体では215件が政府補償の対象と認定され、222件は審査中となっている。
前年2025年には同地域で1,131件の農民自殺が記録されており、農業危機が依然として深刻であることを示している。
コメント:農民自殺は1990年代以降、インド農業が抱える構造的問題を象徴する課題として、国内外で繰り返し議論されてきた。
名目GDPが世界第5位となる経済成長を遂げる一方、人口の約6割が暮らす農村部では依然として深刻な経済的・社会的脆弱性が残されていることを示す象徴的な問題でもある。
特にマハーラーシュトラ州のマラートワーダ地域やヴィダルバ地域は、農民自殺が最も多い地域として知られる。
その背景には、半乾燥地帯でモンスーンに大きく依存する自然条件に加え、綿花や大豆などの商品作物への依存、肥料や農薬などの農業投入資材、債務負担、市場価格の変動、気候変動による干ばつや異常気象、さらに十分とはいえない政策支援など、複数の要因が重なった構造的問題が存在する。
本記事は、こうした状況が現在もなお改善していないことを示しており、インド経済の成長だけでは捉えられない農村社会の現実を理解するうえで重要な事例である。
同時に、農業政策、地域格差、気候変動、社会保障を総合的に考える必要性を改めて示している。
Issue
第1号(2026/06/03)
【CSAS Picks:南アジア注目情報】1

広瀬公巳(特別客員教授)

「ビジャイTN州首相が就任、産業政策は引き続き要注視」
種別:機関発信記事
出典:JETRO
日付:2026年5月14日
URL:https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/05/2f4d2d9a35407d07.html
概要:インド南部タミル・ナドゥ(TN)州議会選挙の結果を受け、州最大政党となった新党タミラガ・ベットリ・カザガム(TVK)の党首で人気映画俳優のジョセフ・C・ビジャイ氏が、州首相に就任した。
コメント:ファンクラブを政治組織化する手法は、ドラヴィダ政治運動の伝統とは少し次元が異なる。有名俳優が選挙に出るのではなく、社会正義を実行する人物に「推し」が集まる。
【CSAS Picks:南アジア注目情報】2

三輪博樹(特別客員教授)

PM Modi urges citizens to cut fuel use, avoid foreign travel
種別:メディア記事
出典:The Hindu
日付:2026年5月11日
URL:https://www.thehindu.com/news/national/article70963121.ece
概要:インドのナレンドラ・モディ首相は、5月10日の集会での演説で、不確実な世界経済、サプライチェーンの混乱、インフレ圧力に耐えるために、総力を挙げて取り組むべきだと呼びかけた。同首相は人々に対して、不必要な金の購入や海外旅行を自粛して外貨の流出を防ぐこと、公共交通機関の利用や在宅勤務を促進することなども要請した。
コメント:中東情勢の悪化はインド経済にも悪影響を及ぼしており、国内では燃料価格の高騰が大きな問題となっている。モディ首相の発言は、こうした状況への対応として国民の協力を呼びかけたものであるが、燃料価格は人々にとって身近で重大な問題であるため、政府が今後の対応を誤れば、政権支持の低下につながる可能性もある。
【CSAS Picks:南アジア注目情報】3

TinWin(特別研究員)

Myanmar’s junta chief turned president heads to India, with an eye on China
ミャンマーの軍政トップから大統領となったミン・アウン・フライン氏、インドへ――中国を視野に
種別:メディア記事
出典:Reuters
日付:2026年5月30日
URL:https://www.reuters.com/world/china/myanmars-junta-chief-turned-president-heads-india-with-an-eye-china-2026-05-30/
概要:ミャンマーのミン・アウン・フライン大統領は、2026年4月の大統領就任後初となる外国訪問として、インドへの5日間の公式訪問を開始した。訪問中には、ナレンドラ・モディ首相との会談が予定されており、二国間協力、国境安全保障、連結性、貿易、経済関係などについて協議するとみられている。本記事ではまた、ミャンマーにおける中国の影響力を抑えることや、同国のレアアース資源へのアクセスを探ることに対するインドの関心も指摘している。
コメント:今回の訪問は、ミャンマーをめぐる地域外交がますます複雑化していることを示している。ミャンマーに関する議論は、多くの場合、民主主義や人権という観点から語られ、それらが重要な論点であることに変わりはない。その一方で、インドのような近隣国は、国境の安定、経済的連結性、中国との競争、重要資源へのアクセスといった実務的課題にも対応しなければならない。したがって今回の訪問は、政治的に議論のある政府と向き合う際に、国家はいかに規範的価値と地政学的現実とのバランスを取るべきかという、南アジア研究にとってより広い問いを浮かび上がらせている。この緊張関係を理解することは、インドのミャンマー政策だけでなく、南アジアと東南アジアにまたがるより広い地域動態を読み解くうえでも不可欠である。
注記:原文は英語、センターにて和訳

当サイト内の署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、岐阜女子大学南アジア研究センターとしての見解を示すものでは有りません。

掲載している肩書や数値、固有名詞などは、原則として初掲載当時のものです。当サイトのコンテンツを転載される場合は、事前にご連絡ください。